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温泉地の案内やパンフレットで、「国民保養温泉地」という言葉を見かけたことはありませんか。なんとなく公的なお墨付きのように感じますが、誰が、どんな基準で決めているのでしょうか。
この記事では、環境省の「国民保養温泉地[温泉の保護と利用]」のページ、「新・湯治の推進」のページ、そして環境省の「国民保養温泉地リーフレット(令和2年11月版)」をもとに、国民保養温泉地のしくみと選定の基準を5つのポイントで整理します。後半の、国民保養温泉地を旅で楽しむ工夫は、この記事の提案です。
※指定の数や各温泉地の計画は変わることがあります。その時点の情報は、環境省の公式サイトで確かめてください。
国民保養温泉地とは
環境大臣が指定する温泉地
環境省のページでは、国民保養温泉地とは、温泉の公共的利用増進のため、温泉利用の効果が十分期待され、かつ、健全な保養地として活用される温泉地を、「温泉法」に基づき環境大臣が指定するものだと説明されています。
リーフレットの説明
環境省のリーフレット(令和2年11月版)では、温泉法(昭和23年法律第125号)第29条に基づき、温泉の公共的利用増進のため、国民の保養休養に重要な役割を果たす温泉地を環境大臣が指定していると書かれています。
「保養」のための温泉地
どちらの説明にも「保養」という言葉が入っています。観光の人気や知名度ではなく、温泉の公共的な利用と保養地としての環境が基準になっている点が特徴です。
国民保養温泉地の5つのポイント
1. 昭和29年に指定が始まった
環境省のページでは、国民保養温泉地の指定は昭和29年から始まったとされています。リーフレットでは、昭和29年に「酸ヶ湯温泉(青森県)」「四万温泉(群馬県)」「奥日光湯元温泉(栃木県)」を指定したと紹介されています。
2. 全国で79箇所
環境省のページでは、令和4年10月現在で、全国で79箇所が指定されているとされています。
3. 利用源泉が療養泉であること
選定の基準の第1として、利用源泉が療養泉であることが挙げられています。
4. 湧出量の目安は1人あたり毎分0.5リットル以上
利用する温泉の湧出量が豊富であることも条件で、目安は温泉利用者1人あたり0.5リットル/分以上とされています。
5. 環境や人材、災害防止も条件
第2として、保養地としての環境、医師との連携などによる入浴指導の体制、温泉資源の保護や衛生管理、高齢者・障害者などへの配慮、災害防止の取り組みが条件に挙げられています。
5つのポイント早見表
| ポイント | 内容 |
|---|---|
| 始まり | 昭和29年(酸ヶ湯・四万・奥日光湯元) |
| 指定数 | 全国79箇所(令和4年10月現在) |
| 泉質 | 利用源泉が療養泉 |
| 湧出量 | 1人あたり0.5リットル/分以上が目安 |
| 環境など | 保養地としての環境、指導体制、衛生管理、災害防止 |
選定の基準をくわしく見る
第1 温泉の泉質と湧出量
環境省のページでは、選定は概ね次の基準で行われているとされています。第1は温泉の泉質と湧出量に関する条件で、(1)利用源泉が療養泉であること、(2)利用する温泉の湧出量が豊富であること(目安は温泉利用者1人あたり0.5リットル/分以上)の2つです。
第2 温泉地の環境など
第2は温泉地の環境などに関する条件で、次の4つが挙げられています。
| 番号 | 条件(環境省のページより) |
|---|---|
| (1) | 自然環境、まちなみ、歴史、風土、文化などの観点から保養地として適していること |
| (2) | 医学的立場から適正な温泉利用や健康管理について指導できる医師の配置計画、または医師と連携して入浴方法などを指導できる人材の配置計画・育成方針などが確立していること |
| (3) | 温泉資源の保護、温泉の衛生管理、温泉の公共的利用の増進、高齢者・障害者などへの配慮に関する取り組みを適切に行うこととしていること |
| (4) | 災害防止に関する取り組みが充実していること |
「概ね」の基準
環境省のページでは、これらは「概ね」以下の基準によって行われていると書かれています。細かな運用については、環境省の資料で確かめるとよいでしょう。
指定数の移り変わり
令和2年11月は77か所
リーフレット(令和2年11月版)では、全国で77か所を指定している(令和2年11月現在)とされています。
令和4年10月は79箇所
一方、環境省のページでは、令和4年10月現在で79箇所とされています。資料の時点によって数が違うので、数字を見るときは「いつ時点の数か」も一緒に確かめましょう。
| 資料 | 時点 | 指定数 |
|---|---|---|
| リーフレット | 令和2年11月現在 | 77か所 |
| 環境省のページ | 令和4年10月現在 | 79箇所 |
国民保養温泉地計画
温泉地ごとの計画
環境省のページには、「国民保養温泉地計画」の一覧が掲載されていて、道府県ごとに、温泉地の計画の名前と策定・改訂の年月が示されています。
一覧に載っている例
たとえば、北海道の「カルルス温泉国民保養温泉地計画」と「ニセコ温泉郷国民保養温泉地計画」は令和7年12月改訂、青森県の「酸ヶ湯温泉国民保養温泉地計画」と宮城県の「鳴子温泉郷国民保養温泉地計画」は令和7年3月改訂とされています。
| 道県 | 計画の名前 | 策定年月 |
|---|---|---|
| 北海道 | カルルス温泉国民保養温泉地計画 | 令和7年12月改訂 |
| 北海道 | ニセコ温泉郷国民保養温泉地計画 | 令和7年12月改訂 |
| 青森県 | 酸ヶ湯温泉国民保養温泉地計画 | 令和7年3月改訂 |
| 宮城県 | 鳴子温泉郷国民保養温泉地計画 | 令和7年3月改訂 |
| 山形県 | 蔵王温泉国民保養温泉地計画 | 令和5年3月改訂 |
県をまたぐ温泉郷も
一覧では、「八幡平温泉郷国民保養温泉地計画」が岩手県と秋田県の両方に載っています。温泉郷によっては、県をまたいで指定されていることが分かります。
リーフレットで紹介されている温泉地
表紙の4つの温泉地
リーフレットの表紙には、梅ヶ島温泉郷(静岡県)、湯布院温泉郷(大分県)、ニセコ温泉郷(北海道)、あつみ温泉(山形県)の名前が並んでいます。
湯布院温泉郷の泉質
リーフレットでは、湯布院温泉郷は由布院・湯平・塚原・庄内・挾間からなり、泉質は、由布院・庄内・挾間が単純温泉、湯平が塩化物泉、塚原が含鉄泉と紹介されています。同じ温泉郷の中でも、場所によって泉質が違うのは興味深い点です。
| 地区 | 泉質(リーフレットより) |
|---|---|
| 由布院・庄内・挾間 | 単純温泉 |
| 湯平 | 塩化物泉 |
| 塚原 | 含鉄泉 |
環境省がすすめる「新・湯治」
平成29年の提言
環境省の「新・湯治の推進」のページでは、新・湯治とは、平成29年7月に「自然等の地域資源を活かした温泉地の活性化に関する有識者会議」により提言された、現代のライフスタイルにあった温泉地の過ごし方の提案だと説明されています。
温泉地に滞在して楽しむ
同じページでは、新・湯治は、温泉地周辺の地域資源を多くの人が楽しみ、温泉地に滞在することを通じて心身ともにリフレッシュすること、そして温泉地を多くの人が訪れることで温泉地自身のにぎわいを生み出していくことを目指しているとされています。
温泉だけではない魅力
環境省のページでは、温泉地には温泉だけでなく、多様な自然、歴史・文化、食など、さまざまな魅力が詰まっていると紹介されています。国民保養温泉地の選定の条件にも、自然環境、まちなみ、歴史、風土、文化などの観点から保養地として適していることが含まれていて、考え方が重なっています。
新・湯治推進プラン
有識者会議では、新・湯治を提供する場として、よりよい温泉地をつくるプランである「新・湯治推進プラン」が提案されていると書かれています。単なる観光地ではなく、現代社会の課題を解決する場として温泉地が果たす役割は重要だと説明されています。
| 項目 | 「新・湯治の推進」のページに書かれている内容 |
|---|---|
| 提言 | 平成29年7月、有識者会議による |
| 内容 | 現代のライフスタイルにあった温泉地の過ごし方の提案 |
| 目指すこと | 滞在してリフレッシュ、温泉地のにぎわいづくり |
| プラン | 新・湯治推進プラン |
国民保養温泉地を旅で楽しむ工夫
ここからは、環境省の資料をもとにした、この記事の提案です。
最初の3か所から訪ねてみる
昭和29年に最初に指定された酸ヶ湯温泉、四万温泉、奥日光湯元温泉を、「国民保養温泉地のはじまり」として訪ねてみるのも、旅の目的のひとつになります。
温泉分析書とあわせて見る
選定の条件には、利用源泉が療養泉であることが含まれています。現地の温泉分析書の泉質の欄とあわせて見ると、温泉地の特徴がつかみやすくなります。
連泊でゆっくり過ごす
「保養」のための温泉地として指定されていることを意識して、1泊だけでなく、連泊でゆっくり過ごす旅を計画してみるのもよいでしょう。
よくある質問
国民保養温泉地は誰が指定する?
環境省のページでは、温泉法に基づき環境大臣が指定するとされています。
いくつある?
環境省のページでは、令和4年10月現在で全国79箇所とされています。
いつから始まった?
昭和29年からです。リーフレットでは、酸ヶ湯温泉、四万温泉、奥日光湯元温泉が最初に指定されたと紹介されています。
最初に指定されたのはどこ?
リーフレットでは、昭和29年に酸ヶ湯温泉(青森県)、四万温泉(群馬県)、奥日光湯元温泉(栃木県)の3か所が指定されたと紹介されています。
新・湯治とは?
環境省のページでは、平成29年7月に有識者会議が提言した、現代のライフスタイルにあった温泉地の過ごし方の提案だと説明されています。
療養泉でない温泉は選ばれない?
環境省のページでは、選定の条件の第1として、利用源泉が療養泉であることが挙げられています。ただし、選定は「概ね」この基準によって行われているとされているので、くわしくは環境省の資料で確かめてください。
湧出量の目安はどれくらい?
温泉利用者1人あたり0.5リットル/分以上が目安とされています。
一覧はどこで見られる?
環境省のページで、国民保養温泉地一覧(PDF)が公開されています。
国民保養温泉地は環境大臣が指定する保養のための温泉地
国民保養温泉地は、温泉の公共的利用増進のため、温泉法に基づき環境大臣が指定する温泉地です。昭和29年に酸ヶ湯・四万・奥日光湯元の3か所から始まり、令和4年10月現在で全国79箇所が指定されています。利用源泉が療養泉であること、湧出量の目安が1人あたり毎分0.5リットル以上であることなどが条件です。旅先を選ぶときの手がかりのひとつにしてみてはいかがでしょうか。