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温泉に入ったとき、「このお湯はどうして温泉と呼べるのだろう」と思ったことはありませんか。実は、日本では「温泉」の定義が法律で決められています。熱いお湯でなくても温泉になる場合もあれば、温泉の中には「療養泉」と呼ばれるものもあります。
この記事では、環境省の公式ページ「温泉の定義」「温泉法の概要」と、環境省が公表している「令和6年度温泉利用状況」だけをもとに、温泉の定義を整理しました。
温泉の定義の基本
温泉法で決められている
環境省の「温泉の定義」のページでは、温泉は、昭和23年に制定された「温泉法」により、地中からゆう出する温水、鉱水及び水蒸気その他のガス(炭化水素を主成分とする天然ガスを除く。)で、表1の温度又は物質を有するもの、と定義されています。
ポイントは次の3つです。
| ポイント | 内容 |
|---|---|
| どこから出るか | 地中からゆう出するもの |
| 何が対象か | 温水、鉱水及び水蒸気その他のガス(炭化水素を主成分とする天然ガスを除く) |
| 条件 | 表1の温度又は物質を有するもの |
温泉法の目的
環境省の「温泉法の概要」では、温泉法(昭和23年法律第125号)は、温泉を保護し、温泉の採取等に伴い発生する可燃性天然ガスによる災害を防止し、及び温泉の利用の適正を図り、もって公共の福祉の増進に寄与することを目的としている、と説明されています。
温泉になる2つの条件
環境省のページの表1では、温泉の条件が「温度」と「物質」の2つに分けて示されています。どちらか一方を満たせば、温泉法の温泉にあたります。
1. 温度
温泉源から採取されるときの温度が、摂氏25度以上であることです。お湯を沸かした後の温度ではなく、温泉源から採取されるときの温度で判断されます。
2. 物質
決められた物質のうち、いずれか一つを、1kg中に決められた量以上含んでいることです。表1には19の物質が挙げられています。
| 物質名 | 含有量(1kg中) |
|---|---|
| 溶存物質(ガス性のものを除く) | 総量1,000mg以上 |
| 遊離炭酸(遊離二酸化炭素) | 250mg以上 |
| リチウムイオン | 1mg以上 |
| ストロンチウムイオン | 10mg以上 |
| バリウムイオン | 5mg以上 |
| フェロ又はフェリイオン(総鉄イオン) | 10mg以上 |
| 第一マンガンイオン(マンガン(Ⅱ)イオン) | 10mg以上 |
| 水素イオン | 1mg以上 |
| 臭素イオン(臭化物イオン) | 5mg以上 |
| 沃素イオン(ヨウ化物イオン) | 1mg以上 |
| ふっ素イオン(フッ化物イオン) | 2mg以上 |
| ヒドロひ酸イオン(ヒ酸水素イオン) | 1.3mg以上 |
| メタ亜ひ酸 | 1mg以上 |
| 総硫黄 | 1mg以上 |
| メタほう酸 | 5mg以上 |
| メタけい酸 | 50mg以上 |
| 重炭酸そうだ(炭酸水素ナトリウム) | 340mg以上 |
| ラドン | 20(百億分の1キュリー単位)以上 |
| ラジウム塩(Raとして) | 1億分の1mg以上 |
2つの条件のまとめ
| 条件 | 基準 |
|---|---|
| 1. 温度 | 温泉源から採取されるときの温度が摂氏25度以上 |
| 2. 物質 | 表1の19の物質のうち、いずれか一つが基準量以上 |
つまり、温度が25度未満の冷たい水でも、物質の条件を一つ満たせば温泉法の温泉になります。反対に、物質の条件を満たさなくても、採取時の温度が25度以上なら温泉になります。
温泉と療養泉の違い
療養泉とは
環境省のページでは、療養泉とは、温泉(水蒸気その他のガスを除く。)のうち、特に治療の目的に供しうるもので、表2の温度又は物質を有するもの、と定義されています。
療養泉の条件
表2の温度の条件は、源泉から採取されるときの温度が摂氏25度以上で、温泉と同じです。物質の条件は、次のうちいずれか一つです。
| 物質名 | 含有量(1kg中) |
|---|---|
| 溶存物質(ガス性のものを除く) | 総量1,000mg以上 |
| 遊離二酸化炭素 | 1,000mg以上 |
| 総鉄イオン | 20mg以上 |
| 水素イオン | 1mg以上 |
| よう化物イオン | 10mg以上 |
| 総硫黄 | 2mg以上 |
| ラドン | 30(百億分の1キュリー単位)=111Bq以上(8.25マッヘ単位以上) |
温泉と療養泉の基準を比べる
両方の表に出てくる物質で比べると、療養泉のほうが基準が高いものがあります。
| 物質 | 温泉(表1) | 療養泉(表2) |
|---|---|---|
| 溶存物質 | 総量1,000mg以上 | 総量1,000mg以上 |
| 遊離二酸化炭素 | 250mg以上 | 1,000mg以上 |
| 総鉄イオン | 10mg以上 | 20mg以上 |
| 水素イオン | 1mg以上 | 1mg以上 |
| よう化物イオン | 1mg以上 | 10mg以上 |
| 総硫黄 | 1mg以上 | 2mg以上 |
| ラドン | 20(百億分の1キュリー単位)以上 | 30(百億分の1キュリー単位)以上 |
また、療養泉は「水蒸気その他のガスを除く」とされているので、温泉の中でもお湯(水)のものが対象です。
温泉法のしくみ
環境省の「温泉法の概要」では、温泉法の主なしくみが紹介されています。
| しくみ | 内容 |
|---|---|
| 温泉の掘削等の許可制 | 温泉の掘削・増掘、動力の装置は、都道府県知事の許可が必要 |
| 温泉源保護の措置 | 都道府県知事は、必要があるときは温泉採取制限命令などを行うことができる |
| 温泉の採取の許可制 | 温泉の採取は、都道府県知事の許可が必要(一定の確認を受けた場合を除く) |
| 公共的利用の許可制 | 公共の浴用・飲用に供しようとする場合は、都道府県知事又は保健所設置市(区)長の許可が必要 |
| 成分・禁忌症等の掲示 | 利用の許可を得た施設では、温泉の成分・禁忌症等の掲示が必要 |
| 国民保養温泉地の指定 | 環境大臣は、温泉の公共的利用増進のための地域を指定することができる |
掲示は10年に一度の分析に基づく
同じページでは、成分・禁忌症等の掲示は、登録分析機関の行う温泉成分分析の結果(10年に一度の定期的な分析を要する)に基づくことが必要、とされています。温泉施設の脱衣所などで見かける掲示は、このしくみによるものです。
数字で見る日本の温泉
環境省の「令和6年度温泉利用状況」(令和7年3月末現在)の全国の合計は、次のとおりです。
| 項目 | 令和6年度計 |
|---|---|
| 温泉地数 | 2,839 |
| 源泉総数 | 27,899 |
| 湧出量 | 2,477,713L/分 |
| 宿泊施設数 | 13,425 |
| 公衆浴場数 | 7,721 |
※温泉地数は宿泊施設のある場所を計上、と注記されています。
温度別の源泉数
| 温度 | 源泉数 |
|---|---|
| 25度未満 | 4,074 |
| 25度以上42度未満 | 6,863 |
| 42度以上 | 12,695 |
| 水蒸気・ガス | 1,036 |
温度別の源泉数を源泉総数27,899で割ると、42度以上が約45.5%、25度以上42度未満が約24.6%、25度未満が約14.6%、水蒸気・ガスが約3.7%という計算になります(残りは表の4区分の合計と源泉総数の差です)。
25度未満の源泉も4,074あります。これらは、温度ではなく物質の条件で温泉にあたるものと考えられます。
使われている源泉と使われていない源泉
同じ資料では、源泉総数27,899が、利用源泉数と未利用源泉数に分けて示されています。
| 区分 | 自噴 | 動力 |
|---|---|---|
| 利用源泉数 | 4,106 | 12,762 |
| 未利用源泉数 | 3,697 | 7,335 |
利用源泉数は合計16,868、未利用源泉数は合計11,032という計算です。温泉法の概要では、温泉の掘削・増掘とあわせて、動力の装置にも都道府県知事の許可が必要とされています。
前年度との比較
「令和6年度温泉利用状況」の表には、令和5年度計も並んで載っています。比べると、次のとおりです。
| 項目 | 令和5年度計 | 令和6年度計 |
|---|---|---|
| 温泉地数 | 2,857 | 2,839 |
| 源泉総数 | 27,920 | 27,899 |
| 湧出量 | 2,496,157L/分 | 2,477,713L/分 |
| 宿泊施設数 | 13,179 | 13,425 |
| 宿泊利用人員 | 120,705,968人 | 125,414,300人 |
| 公衆浴場数 | 7,746 | 7,721 |
都道府県別の数字
令和6年度の資料の都道府県別の値から、上位の5つを並べると次のとおりです。
| 順位 | 温泉地数 | 源泉総数 | 湧出量(L/分) |
|---|---|---|---|
| 1 | 北海道 226 | 大分県 5,094 | 大分県 293,610 |
| 2 | 長野県 193 | 鹿児島県 2,735 | 北海道 189,888 |
| 3 | 新潟県 135 | 北海道 2,249 | 鹿児島県 167,150 |
| 4 | 福島県 122 | 静岡県 2,185 | 青森県 139,808 |
| 5 | 青森県 120 | 熊本県 1,339 | 熊本県 129,598 |
温泉地数は北海道、源泉総数と湧出量は大分県が最も多い値です。大分県の源泉総数5,094は、全国の源泉総数27,899の約18.3%にあたる計算です。
温泉の定義のよくある質問
冷たい温泉もある?
あります。温泉法の温泉は、温度(25度以上)か物質(19のうちいずれか一つ)のどちらかの条件を満たせばよいので、25度未満でも温泉になる場合があります。
天然ガスは温泉?
温泉の定義では、ガスのうち「炭化水素を主成分とする天然ガス」は除く、とされています。
療養泉はすべての温泉?
いいえ。療養泉は、温泉(水蒸気その他のガスを除く)のうち、表2の温度又は物質の条件を満たすものです。
温泉の成分は施設で確かめられる?
温泉法の概要では、公共の浴用・飲用の利用の許可を得た施設では、温泉の成分・禁忌症等の掲示が必要とされています。掲示は、登録分析機関の行う温泉成分分析の結果に基づくことが必要で、分析は10年に一度の定期的なものが求められています。
温泉の定義と2つの条件を知ろう
温泉法では、地中からゆう出する温水などのうち、採取時の温度が25度以上か、19の物質のいずれか一つを基準量以上含むものが温泉とされています。療養泉は、その中でも表2の条件を満たすものです。
次に温泉へ行ったときは、脱衣所の掲示を見て、どの条件にあたる温泉なのか確かめてみてください。